国家公務員共済組合連合会広島記念病院

消化器センターDigestive Disease Center

1. 薬で治らない胸やけや喉の不快感にお悩みの方へ

「胃薬を飲んでも、胸やけや喉の違和感がスッキリしない…」 「長年、逆流性食道炎の薬を飲み続けているけど、このままでいいのだろうか…」

もしあなたがこのような悩みを抱えているなら、その原因は単なる胃酸過多ではないかもしれません。

広島記念病院 消化器センターでは、内科的治療で改善しにくい「逆流性食道炎」や「食道裂孔ヘルニア」に対し、身体に優しい腹腔鏡手術を含めた専門的な治療を提供しています。長年の経験と高度な技術で、あなたのQOL(生活の質)を取り戻すお手伝いをします。

2. 胃食道逆流症(GERD)の診断と標準的な内科治療

現在、他院で治療中の方のセカンドオピニオンも受け付けています。

逆流性食道炎を含む「胃食道逆流症」の治療は、日本消化器病学会の診療ガイドラインに基づき、まずは正確な診断と薬物療法から開始します。

身体への負担に配慮した検査体制

当院では、問診と必要に応じた内視鏡検査(胃カメラ)で診断を行います。

他院で受診済みの方へ:

かかりつけ医や紹介元で内視鏡検査を受けられた場合は、その画像データや報告書を最大限に活用し、当院での再検査を省略、または必要最小限に留めるよう配慮しています。紹介状(診療情報提供書)をお持ちいただくことで、スムーズな診療が可能です。

最新の薬物療法:酸分泌抑制薬(P-CAB・PPI)

現在、胃酸の分泌を抑える薬剤(P-CABやPPI)が治療の第一選択です。これらは胸やけなどの不快な症状を改善する高い効果があります。

「酸」を抑えても消えない症状(非酸逆流と食道外症状)

薬は胃酸の刺激を抑えますが、逆流という「物理的な動き」自体を止めるわけではありません。そのため、胃液や食べ物そのものが逆流し、喉の違和感や長引く咳を引き起こすことがあります。

逆流性食道炎の治療メカニズムの比較。薬物療法による胃酸抑制と、手術による物理的な逆流防止の違い。
図1:逆流のメカニズム(薬 と 手術)

3. 薬が効かない背景にある食道裂孔ヘルニアの正体

薬物治療で症状が改善しない場合、そこには「食道裂孔ヘルニア」という物理的な構造の変化が隠れていることが少なくありません。

食道裂孔ヘルニアとは:胃が「胸」の方へはみ出す状態

本来、胃はお腹(腹腔)の中に収まっており、胸(胸腔)とは「横隔膜」という筋肉の壁で仕切られています。この横隔膜には食道が通るための隙間(食道裂孔)がありますが、ここから胃の一部が胸の方へはみ出してしまう状態が「食道裂孔ヘルニア」です。

正常な胃と食道裂孔ヘルニアの解剖図。横隔膜から胃の一部が胸腔へ脱出している状態の比較。
図2:食道裂孔ヘルニア(解剖図)

なぜヘルニアがあると「逆流」が止まらないのか

食道と胃のつなぎ目には、胃の内容物が逆流しないように締め付ける「逆流防止弁(下部食道括約筋)」の機能が備わっています。

食道裂孔ヘルニアになると、このつなぎ目が横隔膜の正しい位置からズレてしまうため、以下の問題が発生します。

締め付ける力の低下:

横隔膜による外部からの圧迫(補強)が受けられなくなり、弁が緩みやすくなります。

逆流しやすい角度の変化:

本来、逆流を防ぐために保たれている食道と胃の角度(His角)が消失し、胃液がせり上がりやすい形に変わってしまいます。

「薬」では治せない、構造の問題

ここで理解しておくべき重要な事実は、「薬は胃の形(ヘルニア)を治すことはできない」という点です。

強力な薬で胃酸の刺激を抑えることはできても、胃の入り口が緩んでいるという「物理的な故障」はそのまま残りますので、逆流を抑えることは難しく、症状が残る場合があります。薬をやめるとすぐに症状が再発したり、酸以外の逆流(食べた物や消化液)による不快感が続いたりする場合もあります。

4. 手術を検討すべき5つの基準

逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアの治療において、手術は「生活の質(QOL)を改善するための前向きな選択肢」です。日本消化器病学会のガイドラインに基づき、当院では以下の5つの基準を検討の目安としています。

適切な薬物療法を行っても症状が改善しない(薬剤抵抗性)

逆流性食道炎治療薬(エソメプラゾール、ランソプラゾールなどのPPIやボノプラザン)を最大量、十分な期間服用しても、胸やけや逆流感が消えない場合です。これは、酸以外の逆流(非酸逆流)が原因である場合、手術による構造的修復が効果を発揮します。

薬をやめるとすぐに症状が再発する(薬物依存)

「薬を飲んでいれば落ち着くが、服用を中止すると数日で症状が戻る」という状態です。数年、あるいは一生薬を飲み続けることへの不安や、経済的負担を考慮し、手術が選択肢となります。

副作用などで薬の継続が困難

体質的に酸分泌抑制薬が合わない方や、長期服用による健康への影響を懸念される場合、外科的治療が解決策の一つとなります。

大きな「食道裂孔ヘルニア」を合併している

内視鏡検査やバリウム検査で明らかな食道裂孔ヘルニアが認められる場合、胃の入り口の「弁」の機能が物理的に損なわれています。特にヘルニアが大きく、胃の大部分が胸腔内に脱出している場合は、将来的な症状悪化のリスクを考慮し、手術が検討されます。

食道外症状(咳、喉の違和感など)が強い

胃液の逆流が原因で、長引く咳や喉の違和感、声のかすれなどが起きている場合です。これらは薬で酸を抑えても、物理的な逆流そのものが肺や喉を刺激し続けるため、逆流を防止する手術が選択肢として検討されます。

受診を検討するタイミング

上記のうち、1つでも当てはまる項目がある場合は、現在の治療状況を一度整理し、外科的治療のメリット・デメリットを詳しく確認するタイミングかもしれません。当院では、内科・外科両面の知見を持つ専門チームが、客観的なデータに基づいてアドバイスを行います。

手術の成否を分ける「精密な診断」

「手術をすれば必ず治るのか?」という不安に対し、当院では手術前に詳細な評価を行います。

多角的な評価:

内視鏡検査(胃カメラ)に加え、バリウムを用いた透視検査などを行い、ヘルニアの大きさや胃の形、逆流の程度を慎重に判断します。

最適な治療の提案:

検査結果に基づき、内科的治療を継続すべきか、外科的治療が望ましいかを専門チームが客観的に評価します。当院で対応が難しい特殊なケースに関しても、適切な専門機関と連携できる体制を整えています。

5. 当院における腹腔鏡下手術(低侵襲治療)

2004年から腹腔鏡手術を導入

当院では2004年という早期から、食道裂孔ヘルニアおよび逆流防止手術に対して腹腔鏡手術(腹腔鏡下噴門形成術、Nissen法/Toupet法)を導入してきました。

経験豊富な外科医が担当

胃がんや食道がんといった高度な技術を要する手術を豊富に経験した外科医が手術を担当します。

術後2〜5日で退院可能な「低侵襲手術」

腹腔鏡手術は数ミリから1センチ程度の小さな傷から行う手術のため痛みが少なく、早期の社会復帰が可能です。

腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア手術における一般的な傷口の位置(5箇所)と、傷の小ささを示すイラスト。
図3:腹腔鏡手術(一般的な傷口)

手術件数の多さだけでなく、一人ひとりに適した治療選択を重視しています。

6. 高齢の方も安心のサポート体制:地域包括ケア病棟

高齢の方も安心:地域包括ケア病棟での「継続リハビリ」

当院の大きな特徴の一つは、「地域包括ケア病棟」を併設している点です。

退院への橋渡し:

高齢の患者様や、術後すぐに自宅に戻るのが不安な方、体力的な回復(リハビリ)を必要とされる方は、急性期病棟から地域包括ケア病棟へ移動し、最長60日間の入院継続が可能です。

安心のサポート体制:

「手術して終わり」ではなく、食事の工夫や日常生活への復帰を専門スタッフがサポートします。ご家族が受け入れ態勢を整えるための時間的猶予を確保できることも、当院ならではの強みです。

7. 入院期間・費用の目安

当院での手術はすべて健康保険の適応となります。

入院期間の目安:

術後2〜5日での退院が標準的です。

食道裂孔ヘルニア手術後の経過スケジュール。手術当日から翌日の歩行、2〜5日後の退院までの流れ。
図4:手術後の経過

費用の目安

高額療養費制度の適用により、月間の支払い上限額が適用されます。

例:一般的な所得層の方(年収約370万〜770万円)で自己負担額は8〜9万円程度(1ヶ月)となります。市民税非課税世帯の方はさらに軽減されます。

※別途、入院中の食事代や差額ベッド代(希望者のみ)がかかります。
※詳細な試算については、当院の「医療ソーシャルワーカー」が事前にご相談を承ります。

8. よくある質問(FAQ)

どの診療科を受診すればよいですか?

当院では消化器内科・消化器外科が連携して診療を行っています。

逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアが疑われる場合は、まずは消化器内科または消化器外科をご受診ください。薬物療法で十分な効果が得られない場合には、外科的治療も含めて病状に応じた治療を担当医がご提案します。診療科に迷われる場合も、どうぞお気軽にご相談ください。

手術をすれば、一生お薬を飲まなくて済みますか?

手術を受けた方の多くの方で減量または中止が可能です。

ただし、食道裂孔ヘルニアの再発や加齢による機能低下などで、少量の薬を再開するケースもあります。当院では術後の経過観察を丁寧に行い、最適な状態を維持します。

80歳を超えていますが、手術は受けられますか?

はい、可能です。

当院では高齢の方に対しても、身体への負担が少ない腹腔鏡手術を行っています。また、術後の体力が不安な場合は、地域包括ケア病棟にてリハビリを行ってから退院できる体制を整えておりますので、ご安心ください。

手術のリスクや合併症はありますか?

どのような手術にもリスクは伴います。

逆流防止手術特有のものとしては、一時的な飲み込みにくさ(嚥下困難)や、胃の中の空気が排出されにくくなることによる腹部膨満感などが挙げられます。当院ではこれらのリスクを最小限に抑えるよう、慎重に手術を行います。

手術後の食事に制限はありますか?

術後数週間を目安に、症状に応じて柔らかいものから段階的に進めていただきます。

最終的に、ほぼ通常の食事を摂ることを目標にします。

9. 診察をご希望の方へ

「薬が効かない」「手術について詳しく聞きたい」という方は、まずは当院の消化器センターを受診してください。

紹介状をお持ちの方:

かかりつけ医からの紹介状をお持ちいただくと、これまでの治療経過が把握でき、スムーズな診療が可能です。

紹介状をお持ちでない方:

直接の受診も可能です。事前にご連絡下さい。『ホームページの逆流性食道炎のページを見た』とお伝えいただくとスムーズです。

選定療養費が原則必要です。詳細は受付にお問い合わせください。)

【広島記念病院】

〒730-0802 広島県広島市中区本川町一丁目4番3号

電話番号:TEL 082-292-1271(代表)
受付時間:月~金曜日(祝日除く)8:30~17:00
FAX: 082-292-8175

この記事の執筆・監修

広島記念病院 消化器センター 胃外科医長


豊田 和宏とよた かずひろ

資格・所属学会
  • 日本外科学会 専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会 専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医・評議員
  • 消化器がん外科治療認定医
  • 日本内視鏡外科学会 
  • 日本食道学会 食道科認定医
  • Robo-Doc Pilot 国内認定 B級
  • 医学博士

お薬が手放せない、症状がスッキリしないという悩み、一人で抱えずにまずはご相談ください。患者様の将来を見据えた、最適な治療を一緒に考えましょう。

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