国家公務員共済組合連合会広島記念病院

広島記念病院ブログvol.14

胆石症

当院では、胆石症、急性胆嚢炎をはじめとする胆石性疾患に対し、年間200例前後の胆のう摘出手術を行っています。手術の方法は、腹腔鏡手術が第一選択で、当院では97-98%の患者さんに腹腔鏡での手術を行っています。最近では、手術技術の向上もあり、上腹部手術後の癒着が高度な症例や総胆管結石症例にも適応を拡大しています。入院期間の短縮、早期社会復帰を目指し、急性胆嚢炎の患者さんに対しても、72時間以内のできるだけ早期の手術治療に取り組んでいます。また、炎症や癒着が予想されない患者さんには、手術器具を挿入するポートを減らした reduced port surgery を選択し、より低侵襲な手術を積極的に行っています。

胆石症とは

胆石はどうしてできるの?

胆石は、大きく2つの種類があります。コレステロール胆石と色素胆石です。コレステロール胆石は、コレステロールを主成分とした胆石で、胆汁中のコレステロール濃度が高いときや胆嚢の動きが低下したときに、コレステロールが結晶となり次第に大きくなって胆石となります。コレステロール結石ができやすい人は、Forty(40歳代)、Female(女性)、Fatty(肥満)、Fair(白人)、Fecund(多産婦)といわれ、頭文字をとって「5F」として知られています。色素胆石の中で最も多いビリルビンカルシウム結石は、細菌の感染が原因とされています。もう一つの色素胆石である黒色石については、原因が分かっていません。

胆石の症状はどのようなものがありますか?

腹痛、吐き気、腹痛などがあります。腹痛の原因の一つは、胆嚢の緊張性けいれんです。特に脂肪の多い食事後に起こることがあります。その他、発熱や黄疸など、胆石により急性胆管炎を起こす場合もあり、緊急の治療が必要です。ただし、胆石をもっている人のすべてに症状が出るわけではなく、約半数の人はなにも症状なく経過します。

胆石があると胆嚢がんができやすいのでしょうか?

胆石と胆嚢がんの関係ははっきりしていません。胆嚢がんの患者さんは、同時に胆石をもっている頻度は、40-70%と高率です。胆石による胆嚢粘膜への慢性的で長期間の刺激は、なんらかの遺伝子の異常を来し胆嚢がんのきっかけになるという報告もあります。胆石が充満している患者さんや胆嚢の壁が厚い患者さんは、胆嚢がんの発生に注意して年に1~2回程度の超音波検査を行い、経過観察することをおすすめします。

胆石と言われましたが、痛みがありません。手術するほうがいいでしょうか?

胆石があっても痛みがない場合には、基本的には手術の必要はありません。胆石の症状を認める人は年2~4%程度と少なく、症状がなければ、大部分の人は無症状のまま経過するといわれています。痛みを起こすリスクが高い人や胆嚢の壁が厚く、胆嚢がんとの鑑別が難しい人などは、治療方法について専門医にご相談ください。

胆石の腹腔鏡手術はどのようにするのですか?

胆石の手術は、胆嚢をすべて取り出します。胆嚢を摘出する方法として、腹腔鏡手術と開腹手術があります。腹腔鏡手術は、小さな傷で術後の回復が早いこと認められ、現在は、腹腔鏡下胆のう摘出術が第一選択となっています。当院では、年間200人以上の患者さんが胆石の手術を受けられますが、97-98%の患者さんに腹腔鏡での手術を行っています。最近では、手術技術の向上もあり、上腹部手術後の癒着が高度な症例や総胆管結石症例にもこの手術を行われています。しかし、腹腔鏡では、炎症が強く組織の剥離が難しい場合や、胆嚢がんなどの腫瘍性の病変を疑う場合には、開腹での手術が選択されます。

腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹手術における手術創のちがい

腹腔鏡下胆のう摘出術には、ポート(手術操作を行う鉗子、カメラを挿入するあな)の挿入部位、方法などいくつかの方法があります。通常、4つのポートで手術を行う場合が多く(左側)、炎症や癒着を認めない場合、おへその1か所から操作を行う single port法で行う場合もあります(中央)。炎症が強い場合やがんの手術を行う場合は、開腹にて手術を行います(右側)。正中切開(①)の場合と肋骨弓下切開(②)を用いる場合があります。

腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹手術における手術創の違い1
腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹手術における手術創の違い2
腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹手術における手術創の違い3

胆石症の手術の合併症はどのようなものがありますか?

腹腔鏡を使用した手術は、開腹での手術と比べ、直接臓器を手で触れることができず、モニターに映し出された範囲に視野が制限されている、立体的に見えないなどの欠点もあります。合併症としては、胆管を損傷したり、出血、十二指腸や結腸など近くにある臓器を損傷したりする可能性があります。また、腹腔鏡では、炭酸ガスを腹腔内に充満させて手術をするため、呼吸機能への影響や、皮下気腫や術後の肩の痛みなどが生じる可能性があります。

胆石の薬はありませんか?

直径が10mm未満で石灰化のないコレステロール結石は、薬の治療が期待できます。コレステロール結石の治療薬は、ウルソデオキシコール酸という胆汁の成分(胆汁酸)の1つです。胆汁酸を補い胆汁中にコレステロールを溶解させる作用があります。しかし、胆石は薬の治療の問題は、100%取り除くことができないことが多く、特に胆嚢の動きが悪い人は再発することがあげられます。また、十分な効果をみるためには、6カ月~1年以上長期間の内服が必要です。

胆管に結石があるといわれました。治療が必要でしょうか?

胆管にも結石がある場合は、基本的には治療が必要です。胆石は胆のうだけではなく胆管にもできます。結石が総胆管にある場合は「総胆管結石」、肝内胆管にある場合は「肝内結石」と呼びます。胆管にはじめから胆石ができる場合(多くはビリルビンカルシウム石)と、胆嚢から総胆管内に石が落ちてできる場合(多くはコレステロール結石による落下結石)があります。総胆管結石に胆管炎を伴った場合、高熱や腹痛、黄疸など重篤化することが多いため、すぐに治療が必要です。また、偶然胆管結石を指摘されることがありますが、胆管炎を起こす場合が多いので、いずれにしても治療をおすすめします。

総胆管結石の治療は?

胆管にできた胆石の治療は、いくつかの方法がありますが、当院では、内視鏡(胃カメラ)で胆管の出口から総胆管結石の砕石を行う「内視鏡的総胆管結石摘出術」を行っています。胆嚢結石からの落下結石が疑われる場合、追加で胆嚢の摘出を行うことをおすすめします。

肝内結石の治療は?

肝臓の中の胆管に結石ができる場合もあります。特に、ビリルビンカルシウム石ができる場合、胆管の狭窄と細菌感染が結石の原因となります。結石が原因で肝臓が委縮している場合、胆管がんの発生する危険性があるため、手術でその部分を切除する場合もあります。

胆嚢をとった後の生活は?

胆嚢は胆汁を蓄え、食事が通過するタイミングで収縮し、効率よく消化吸収をする働きをしています。胆嚢を取り除いた後、消化する機能が落ちることを心配される患者さんもいると思いますが、手術により消化吸収が低下することはないと考えられています。胆嚢を取り除いた後は、症状がなければ通院の必要はありません。何らかの症状が出た場合は、胆管結石など新たに発症する病気もありますので、お早めに受診してください。

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