*膵がんの診断、治療は、膵臓・胆道グループの最重要課題の1つです。
膵がんとはどんな病気?
膵がんのほとんどは、膵管上皮から発生する「浸潤性膵管がん」で、膵がんというと一般的に「浸潤性膵管がん」のことをいいます。発生する部位より、「膵頭部がん」「膵体部がん」「膵尾部がん」に分けられます。膵がんは、肺がん、大腸がん、胃がんに次いで死亡原因の第4位のがんで、診断される患者さんの数は、2017年には年間罹患者数は3万5千人を超え、今後も増加すると予想されています。
膵癌の予後は非常に悪いことが知られています。膵臓は肝臓や胆管、十二指腸などの重要な臓器や血管に囲まれているために、膵がんになると周囲に浸潤・転移をしやすい特徴があります。その他、膵がんは周りの組織の間をパラパラと広がるように浸潤し、手術できれいに取り切れることが難しいことや、もともと生物学的に悪性度が高いことなどが予後の悪い理由といえます。膵がんの全体の5年生存率(5年間生存可能であると予想される患者さんの割合)は、残念ながら10%未満と報告されています。しかし、最近10年間で、膵がん治療は大きく進歩してきており、膵がんを治癒・克服するための光も見えてきています。
- 膵がんのほか膵臓にできる主な腫瘍
-
のう胞性膵腫瘍
内部に液体や粘液がたまった膵臓内部の袋状の腫瘍です。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液産生膵腫瘍(MCN)などがあります。
膵神経内分泌腫瘍
ホルモンを産生する膵臓の内分泌細胞から発生する腫瘍。機能性腫瘍(血中にホルモンを過剰に分泌し、症状が引き起こされるタイプ)と非機能性腫瘍(ホルモンの過剰分泌がないタイプ)の2種類があります。
膵がんにかかりやすい人はどんな人?
膵がんにかかりやすい人は、糖尿病、慢性膵炎、膵のう胞、肥満、喫煙、大量飲酒などがあります。膵がんの発症は糖尿病の発症の2年以内に多く、特に糖尿病を新しく発症された場合は、膵がん発見のきっかけとなります。また、喫煙や慢性膵炎は膵がんのリスクを増加させることが知られています。膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)をはじめとする膵のう胞は、膵がんの前癌病変として慎重な経過観察が必要です。また、膵がん患者さんの3~7%に家族歴があることが分かっています。日本では、家族性膵癌の登録制度が2013年より開始されています( 家族性膵癌登録制度 )。第一近親者(親、兄弟姉妹、子)に2人以上の膵がんの方がおられた場合、膵がんの発生は6~7倍と高くなり、定期的な検査をおすすめします。
- 膵がん発生のリスクファクター
-
合併疾患
糖尿病、肥満、慢性膵炎、IPMNなどの膵のう胞
嗜好
喫煙、アルコール
家族歴
家族性膵がん
遺伝性
遺伝性膵炎
膵がんになるとどんな症状が出るの?
膵がんは、症状がでにくく早期には自覚症状がほとんどありません。病状が進行してくると、腹痛や背部痛、黄疸、体重減少などの症状が現れます。また、症状ではありませんが、急に糖尿病が発症したり、もともと糖尿病にかかっている場合、突然悪化したりすることが知られています。腫瘍により膵液の流れが悪くなり、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンの働きが低下するためと考えられています。急激な体重減少やのどの渇き、多尿などの症状に注意が必要です。
膵がんの診断・治療
膵がんの検査方法は?
主な検査として、血液検査、画像検査(超音波検査、CT検査、MRI検査)、内視鏡による検査を行います。
血液検査:
血糖値や膵臓から分泌される消化酵素(膵酵素)、腫瘍マーカー(CA19-9, CEA, DUPAN-2, Span-1)などを調べます。
超音波検査:
CT検査と同様に最初に行われる検査で、腫瘍の有無を確認したり、膵管の拡張などを調べます。からだに負担が少ない検査です。
CT検査:
がんの診断の中心となる検査です。造影剤を使用し詳細に膵臓の病気を確認します。その他、肺や肝臓、リンパ節や腹膜などへの病変の広がりもチェックできます。
MRI/MRCP検査:
CT検査と同様に断層撮影を行う検査です。X線ではなく強力な磁気を利用した検査法で、より詳細な情報を得ることができます。造影CT、MRI検査は、膵がんの診断に欠かせない検査です。
↓ ここからの検査は、診断確定のためのより詳細な検査となります。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)検査
内視鏡を使って十二指腸乳頭部(主膵管の十二指腸開口部分)からカテーテルを膵管や胆管に挿入し、造影剤を注入してX線撮影する検査です。CT検査やMRI検査で膵管に狭いところがあるが腫瘤がはっきりしない場合、ERCPを行い早期の膵がんが診断できる可能性があります。カテーテルから膵液や胆汁、細胞などを採取し、がん細胞の有無を調べます。黄疸がある場合は、検査と同時に胆道ドレナージ処置を行います。
EUS(超音波内視鏡)検査:
先端に超音波の装置が付いた特殊な内視鏡で、口から挿入し、胃や十二指腸の中から膵臓に超音波を当てて膵臓を観察する検査です。通常の超音波検査より詳しい情報を得ることができます。場合によっては、超音波をみながらピンポイントで組織を生検(EUS下生検)することもあります。
進み具合は(病期)はどのように分類されていますか?
がんの進み具合は病期であらわされます。膵がんの病期分類には日本膵臓学会が定めている膵癌取扱い規約(第7版)と国際的なUICC TNM分類があります。病期は、がんの大きさや浸潤の程度、他の臓器やリンパ節への転移の有無によって分けられます。
病期を決定する主な検査方法は造影CT検査とMRI検査です。しかし、これらの画像検査ではっきりと診断できない肝転移や腹膜転移などもあり、遠隔臓器への転移が否定できない場合には、必要に応じてPET検査や審査腹腔鏡といった検査を行います。
膵がんの進行度分類 膵癌取扱い規約第7版(日本膵臓学会)
膵がんの進行度は、がんの局所的な広がりを示すT因子、リンパ節への転移の有無をみるN因子、肝臓や肺などの膵臓以外の遠隔臓器への転移を表すM因子、これら3つの因子でステージが決まります。
2016年7月に、現在の規約に更新され、これまでの規約から大きく変わりました。腹腔動脈や上腸間膜動脈などの腹部の動脈への浸潤の有無による切除可能性分類が加わりました。また、リンパ節個数別のN因子の記載が加わりました。
進み具合は(病期)はどのように分類されていますか?
がんの進み具合は病期であらわされます。膵がんの病期分類には日本膵臓学会が定めている膵癌取扱い規約(第7版)と国際的なUICC TNM分類があります。病期は、がんの大きさや浸潤の程度、他の臓器やリンパ節への転移の有無によって分けられます。
病期を決定する主な検査方法は造影CT検査とMRI検査です。しかし、これらの画像検査ではっきりと診断できない肝転移や腹膜転移などもあり、遠隔臓器への転移が否定できない場合には、必要に応じてPET検査や審査腹腔鏡といった検査を行います。
膵がんの進行度分類 膵癌取扱い規約第7版(日本膵臓学会)
膵がんの進行度は、がんの局所的な広がりを示すT因子、リンパ節への転移の有無をみるN因子、肝臓や肺などの膵臓以外の遠隔臓器への転移を表すM因子、これら3つの因子でステージが決まります。
2016年7月に、現在の規約に更新され、これまでの規約から大きく変わりました。腹腔動脈や上腸間膜動脈などの腹部の動脈への浸潤の有無による切除可能性分類が加わりました。また、リンパ節個数別のN因子の記載が加わりました。
進行度分類 T因子、N因子、M因子
- T因子
-
- Tis:非浸潤癌
- T1:腫瘍が膵臓に限局していて、最大径が20mm以下
ー T1a 最大径が5mm以下 - ー T1b 5-10mm
- ー T1c 10-20mm
- T2:腫瘍が膵臓に限局しているが、20mm以上の大きさ
- T3:腫瘍の浸潤が膵を越えて進展するが、動脈(腹腔動脈、上腸間膜動脈)へ浸潤を認めないもの
- T4:腫瘍が動脈(腹腔動脈、上腸間膜動脈)に及ぶもの
- N因子
-
- N0:リンパ節への転移がない
- N1:領域リンパ節への転移あり
- ー Na1 1-3個のリンパ節転移
- ー Nab 4個以上のリンパ節転移
- M因子
-
- M0:遠隔転移なし
- M1:遠隔転移あり
進行度分類 ステージ
膵癌登録症例における進行度(Stage)別の生存率(全症例 3,315例 2001~2007年)
膵癌取扱い規約第7版からの抜粋
ステージ | T因子 | N因子 | M因子 |
---|---|---|---|
Stage 0 | Tis | N0 | M0 |
Stage IA | T1 | N0 | M0 |
Stage IB | T2 | N0 | M0 |
Stage IIA | T3 | N0 | M0 |
Stage IIB | T1, T2, T3 | N1 | M0 |
Stage III | T4 | N0-1 | M0 |
Stage IV | T1-4 | N0-1 | M1 |
切除可能性分類
切除可能性分類は、標準的な手術を行うことでがんがすべて取り切れるか(R0手術)どうかという視点から、切除可能(Resectable: R)、切除可能境界(Borderline resectable: BR)、切除不能(Unresectable:UR)の3つにわけられています。切除可能性分類は、第7版から新しく取り入れられた分類ですが、治療方法がことなるため、膵がんの治療においては非常に重要な概念といえます。
- 切除可能性分類
-
- 切除可能(Resectable: R)肝臓に向かう門脈や、上腸間膜動脈、肝動脈、腹腔動脈という腹部の主要な動脈に浸潤がない。
- 切除可能境界(Borderline resectable: BR)門脈に半周以上に浸潤がある場合や、腹部の動脈に半周以下の範囲で浸潤を認めるもの。
- 切除不能(Unresectable:UR)
ーUR-LA(局所進行):門脈への浸潤が高度なもの、腹部動脈に半周以上の浸潤を認めるもの。 - ーUR-M(遠隔転移あり):遠隔転移を認める場合。
膵がんにはどんな治療法があるの?
膵がんの治療法には、手術、化学療法、放射線療法、支持療法などがあり、病期と患者さんの全身状態などを考慮して、患者さんやご家族と相談の上、治療方法を選択します。
膵がんの手術はどのようなものですか?
膵がんに対する外科切除する場合、がんの発生部位、進行度によって切除の範囲が多少異なりますが、大きく分けると、膵頭部側を切除する「膵頭十二指腸切除術」と膵尾部側を切除する「膵体尾部切除術」に大別できます。また、症状緩和のために手術を行うこともあります。
膵頭十二指腸切除術
膵頭十二指腸切除術の切除範囲
がんを含む膵頭部、十二指腸、小腸の一部、胆嚢、胆管、がんの進展・転移が予想される領域リンパ節(赤色部分)をまとめて切除します。膵臓、胆管、十二指腸(または、胃)、小腸を切離した部分を再建します。
膵頭十二指腸切除術の再建後
膵体尾部切除術
膵全摘術
膵臓内を広い範囲進展しているがんに対して行われる手術です。膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除を一緒に行い、膵臓の全てを切除する手術です。通常の膵がんは、膵臓を進展する前に周囲の血管などに浸潤するため、膵全摘を行うことはほとんどありません。膵手術後の残った膵臓にがんが発生した場合は、残膵を切除する膵全摘(残膵全摘)を行います。
膵全摘術では、消化と血糖の調整を行う膵外分泌機能と膵内分泌機能が失われるため、患者さんの術後の生活の質(QOL)が著しく低下する場合があります。術後には消化を助ける消化酵素剤の服用やインスリン注射が必要になります。
緩和手術(バイパス手術)
膵がんの症状の緩和を目的にした手術です。十二指腸が閉塞して食事が通らなくなるのを防ぐため胃と小腸をつなぐバイパス手術や、黄疸が出ないようにするための胆管と小腸をつなぐバイパス術などがあります。
手術の合併症はどんなものがありますか?
膵がんに対する手術は、他の消化器がんの外科手術と比較し、切除する臓器が大きく、患者さんに与えるストレス(侵襲)がとても大きい手術の1つです。近年の外科手術手技や周術期の管理方法などの進歩により、膵がん手術の安全性は高まっていますが、膵臓手術をたくさん行っている施設においても、合併症の頻度は40%前後と高い手術で、手術に関連した死亡率は全国の平均で2-3%とほかの手術と比較し高率です。特に、膵の切除部分から膵液が漏れる「膵瘻」は、出血や腹腔内膿瘍などの感染症を起こし、時に重篤な症状へ発展するため、膵臓に関連した合併症の制御は、膵臓外科における重要な課題といえます。
膵臓手術に特に関連のある合併症 | ほかの消化器疾患でも起こる合併症 |
---|---|
膵液の漏れ(膵漏) | 肺炎、胸水 |
出血 | 腸閉塞 |
腹腔内膿瘍 | 血栓性の合併症 ー下肢静脈血栓、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群) |
胃内容排泄遅延 | 食欲不振 |
胆汁の漏れ(胆汁瘻) | 体重減少 |
門脈血栓症 | |
胆管炎 | |
下痢 | |
糖尿病 |
膵がんの外科治療の安全性向上のために
当科における膵切除手術は、膵頭十二指腸切除術については、年間15-20例程度です。がんの局所制御の確実性に関して言えばやはり外科切除が第一との観点から、治癒切除が可能と判断された症例は積極的に手術適応としています。膵がんの患者さんは栄養状態が不良なことが多く、成分栄養剤や高力価消化酵素剤を導入し、早い段階から栄養状態の改善を試みています。より安全な周術期管理を目指して、入院から退院までの一連の流れを示したクリニカルパスを導入しており、出来るだけ早く社会復帰できるように心がけています。術前の呼吸器訓練や口腔機能管理を行い術後の感染症に起因する合併症の予防に取り組んでいます。
膵がんの化学療法、放射線療法とは?
手術が困難な場合は、手術後に再発があったときには、抗がん剤による化学療法が行われます。抗がん剤は、体内に投与された後、全身を巡ってがん細胞の増殖を抑えます。その他、化学療法を行う場合として、手術した後の再発予防や、切除可能境界(BR)膵がんなど、手術でがん細胞をすべて取り切れないことが予想される場合、化学療法を行って腫瘍が小さくなった段階で手術を行う(術前化学療法)試みもされています。
膵がんの1次化学療法(最初に行う治療)として、ゲムシタビン、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、ゲムシタビンとナブパクリタキセル(アルブミン懸濁型パクリタキセル)の併用、FOLFILINOX療法などがあります。どの治療を行うかは、病状や患者さんの状態を総合的に判断して決定されます。
放射線療法は、放射線を用いてがん細胞の増殖を抑える治療です。他の臓器への転移がないものの、腫瘍がその場所で進行しすべて手術で取り切れない場合や、肺や骨など転移部の進行を抑えるために行う場合があります。
膵がんに適応のある代表的な化学療法剤
抗がん剤
( )内は商品名です
- ゲムシタビン(ジェムザール)
- テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン)
- FOLFILINOX療法(フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン、レボホリナート)
- ナブパクリタキセル(アルブミン懸濁型パクリタキセル:アブラキサン)
分子標的薬
- エルロチニブ(タルセバ)
外来化学療法について
抗がん剤による化学療法は、入院して治療する場合と外来で通院しながら治療を受ける場合(外来化学療法)があります。膵がんの化学療法は、通常、外来通院をしながら治療を受ける外来化学療法を行います。普段と変わらず日常生活を続け、仕事や家事と治療を両立させることができます。投与スケジュールは病状や患者さんの状態により決まります。ゲムシタビンの場合、診察後、準備を含めた1回にかかる治療の所要時間は、約1時間程度です。
外来化学療法の流れ
副作用、体調、採血結果の確認
- 採血検査
- 診察
- 化学療法
化学療法の副作用にはどんなものがありますか?
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が現れることがあります。副作用の症状や程度は、抗がん剤の種類によって異なり、個人差もあります。抗がん剤の副作用には、自覚症状のある副作用と、自覚症状がほとんどなく検査で分かる副作用があります。薬の効果や副作用、患者さんの全身状態をみて慎重に治療は行いますが、何か異常や違和感がある場合は医師やスタッフにご相談ください。
自覚症状のある副作用
よくある副作用として、発熱や全身倦怠感、吐き気・嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、脱毛などがあります。これらの症状の多くは、骨髄や口腔粘膜、消化管粘膜、毛根などの分裂が盛んな細胞が、抗がん剤によってダメージを受けるために現れます。
検査で分かる副作用
抗がん剤は、血液細胞を作る働きをしている骨髄中の造血細胞にも影響を与えます。そのため、白血球数や赤血球数、血小板数などが減少し、感染症や貧血、出血などが起こりやすくなります。また、肝機能障害など採血でしかわからない副作用が出ることがあります。外来受診時には、投与前に採血検査を行います。検査結果によっては、抗がん剤の投与を見合わせたり、薬の量を減量して化学療法を行う場合があります。
- 抗がん剤による治療
-
あまり無理をしすぎて、途中で中断するよりは、元気な状態で長期間続けていくことが大切です。副作用が強く表れた場合は、抗がん剤を減量したり、投与を延期したりして回復を待ちます。症状がつらいときは我慢せず、スタッフにご相談ください。
緩和療法とは?
病期や治療に伴う肉体的及び精神的な苦痛を和らげるための治療です。病状が進行し、痛みが現れた場合は、その程度に応じて鎮痛薬の投与を行い痛みのコントロールを行います。当院では、安心して治療を行っていただくために、医療用麻薬(モルヒネやフェンタニルなど)の使用も含め、できるだけ早い段階から痛みへの治療に取り組んでいます。患者さんによっては、麻薬の使用に抵抗があるかもしれませんが、正しく使えばとても良い薬で、痛みをとることで患者さんの元気が回復し、治療効果も上がると考えます。
- 精神的に不安になったら…
-
病気になると、不安やいらだち、絶望、孤独感などの精神的な負担を伴います。また、抗がん剤や手術による生活面での不安や、医療費の負担など、様々な心へのストレスが発生します。患者さんが元気で、病気と向かい合う気持ちがあってこそ、がんの治療は可能となります。当院ではがんに対する積極的な治療はもちろん、緩和治療を並行して行い、医師、看護師、薬剤師や患者さんのケアをサポートする専門の部門(患者相談支援センター)が連携してチーム医療に取り組んでいます。精神的につらいときは、一人で抱え込まず、ご家族やチーム医療のスタッフにご相談ください。
仕事は続けられますか?
がんの進行の程度や患者さんの体力などにより個人差はありますが、膵がんの治療中は症状や合併症、化学療法による副作用があるため、これまでと全く同じライフスタイルを維持するのは難しいことが多いと思います。仕事を続けている患者さんも多くいらっしゃいますが、治療中は疲れやすかったり、突然の発熱など急な症状があり、すぐに医療機関へかかっていただきたい場合もございます。周囲の方の協力を得て、仕事のやり方を少し変えてみるなどの工夫が必要です。
最後に
膵がんは、予後が悪く、消化器がんのなかでもっとも治りにくいがんといわれます。しかし、新規抗がん剤の開発や手術手技の向上により、より安全で根治性の高い手術が行われ、またこれまで切除不能といわれてきた患者さんも手術ができる時代になってきました。ここ10年の間でも膵がん患者さんの予後は飛躍的に向上しており、膵がんを治癒・克服するための光が見えてきています。
患者さんやご家族の方々は、とても不安な気持ちで治療に臨まれていることと思います。膵臓・胆道グループでは、難治の肝胆膵領域がんを克服していただくために、スタッフが一丸となり、最新の知見を習得し、患者さんにとって最善の治療を追求しています。