国家公務員共済組合連合会広島記念病院

広島記念病院ブログvol.3

ヘリコバクター・ピロリ感染症

1983年にJohn Robin WarrenとBarry James Marshallによってピロリ菌が発見されるまで胃の中は無菌であると信じられていました。
その後の研究で消化性潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫などの多くはピロリ菌が原因であると判明しています。ピロリ菌の除菌治療を実施することでそれらの疾患に一定の予防効果が期待されています。副作用は稀ですが、下痢、アレルギー、除菌後の胸焼けなどが知られています。気になる方は主治医にお申し出ください。

よくある質問

1.ピロリ菌とは何ですか?

自らアンモニアを産生して酸を中和することで、本来酸性の胃の中で生存可能な細菌です。

ピロリ菌の感染が原因で慢性胃炎を生じ、様々な病気の原因になっていると考えられています。主な病気は胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫、特発性血小板性紫斑病、萎縮性胃炎などがあります。

2.どの様にして感染するのですか?

食事など口から入って感染するといわれています。

殆どは5歳以下の幼少時に感染して、持続感染するといわれています。成人になって感染する場合は、免疫反応が強く生じて急性胃粘膜障害(AGML)という状態で発症し、強い心窩部痛、嘔気で発症することがあります。

3.診断はどのようにして行うのですか?

血液及び尿中の抗体(ピロリ菌に対する免疫反応で産生される)、便中抗原(ピロリ菌の殻の成分)、尿素呼気試験(UBT)などの内視鏡検査を必用としない検査と、迅速ウレアーゼテスト(RUT)、鏡検法(胃の組織を顕微鏡で観察)、胃粘膜培養検査などの内視鏡検査が必用な検査と多種あります。いずれも検査も保険診療で可能ですが、先に内視鏡検査を行って慢性胃炎などの診断を行っておく必用があります。それぞれの検査に長所、短所があるため必用に応じて検査を使い分けています。

4.治療はどうするのですか?

ピロリ菌の治療(除菌治療)は1週間の内服治療になりますが、2種類の抗生物質と、胃薬(酸分泌抑制薬)を組み合わせて行います。治療後最低1ヶ月期間を空けて、便抗原もしくは尿素呼気試験で行うことが推奨されています。初回の治療で60-80%成功しますが、失敗した場合は薬剤を一部変更して治療(2次除菌)を行うことが保険診療で可能です。2次除菌が失敗した場合や、保険診療で使用可能な薬剤が副作用などで使用できない場合は自由診療として他の薬剤を使用して治療することとなります。当院で可能なものもありますが、他施設に紹介することもあります。

5.治療で副作用はありますか?

使用する薬剤が必ずしも副作用が多い訳ではないのですが、抗生物質・胃薬いずれも薬疹や肝機能障害が出現することあり、症状が強く死亡した例は全国調査で報告があります。過度に恐れる必用はありませんが、残念ながらゼロでありません。その他、抗生剤を服用することで軟便~下痢(稀に出血伴う)、味覚異常(治療中苦みが持続する)などを生じることがあります。

6.治療したほうがいいのですか?

胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発を防ぐためにも既往のある方は推奨されます。

胃MALTリンパ腫は腫瘍ですが除菌治療のみで治療可能な場合も多く、治療の第一選択となっています。特発性血小板性紫斑病も他の治療よりは副作用や費用などから考慮しても行うことが推奨されます。慢性胃炎及び胃癌の内視鏡治療後は、主に胃癌の予防目的で除菌治療が行われますが、年齢が若い段階で除菌するほど効果があると考えられています。

7.除菌治療すると内視鏡検査をしなくてもよいのですか?

除菌治療しても胃癌になることはあります。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍も稀ですが除菌治療しても再発することがあります。年に1回は内視鏡検査を受けることを勧めています。

8.胃の手術をしていますが除菌治療できますか?

一般的に、術後胃の場合除菌治療の成功率が良くないといわれています。

胃の全摘術を行っている場合は適応ありません。

9.除菌治療成功した後で、再感染することはあるのですか?

稀ですが、再感染例の報告はあります。

井戸水などの摂取などで再感染した可能性が考えられています。

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