国家公務員共済組合連合会広島記念病院

広島記念病院の特色
広島記念病院の特色

Feature

広島記念病院の特色

広島記念病院の
4つの特色を紹介します

腹水治療センターについて

平成29 年4 月より腹水治療センターを開設しました。開設に先立って、改良型CART の開発者である松崎圭祐先生にご講演(平成28 年12 月2 日)いただきました。腹水がなくなることにより、食欲回復、痛みの緩和、呼吸苦の軽減など、低下した生活の質(Quality of Life; QOL)が劇的に回復される患者さんも経験しております。腹水治療は、緩和治療の一つとしても有効で、腹部の膨満感が解消され食欲が改善するなどQOL の回復が期待できるため、がん化学療法を再開し、予後の延長も期待できると考えています。

最新医療 腹水ろ過濃縮再静注療法とは

腹水ろ過濃縮再静注療法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)は、腹水を穿刺排液を行いますが、その抜いた腹水を再利用して体内に戻すという治療法です。CARTでは、腹水を抜いてがん細胞や細菌などを取り除き、アルブミンなどの有用なタンパク成分を特殊な体外循環ろ過装置を回収して、濃縮後に点滴で血管内に戻します。しかし、この治療法の問題点として、腹水の回収や濃縮に時間がかかることや点滴後にアレルギー反応などにより発熱やショック状態になることが報告されており、有効性の面から限られた施設で行われています。

腹水ろ過濃縮再静注療法の仕組み

シンプルな回路構成
機械刺激によるがん細胞の破壊が少なく、免疫細胞の活性化を軽減させる効果が期待される
内圧濾過方式から外圧濾過方式への変更で目詰まりを減少させ、サイトカインなどの有害物質の産生を低減できる可能性がある
洗浄機能があるため、濾過器の腹水処理可能量が増え加し処理速度が速い

実績

悪性疾患 症例数 施行回数
胃がん 57 135
大腸がん 38 71
膵がん 34 84
婦人科がん 18 53
胆管・胆嚢がん 15 37
乳がん 7 18
腹膜中皮腫、偽粘膜腫 6 70
その他(腹膜がん、泌尿器)膜 14 33
合計 189 501
悪性疾患 症例数 施行回数
肝硬変(肝細胞がん 6例含む) 47 313
その他 6 11
合計 53 324

治療費・入院について

CARTは保険適応の治療法で、1回あたり98,800円×保険負担率で、2週間に1度施行できます(入院費用は別途必要)。2泊3日程度の入院が必要になります。難治性腹水でお悩みの方は一度ご相談ください。

チーム医療

医療の高度化や超高齢化社会の到来から、医師及びメディカルスタッフの密な連携がより必要となっております。当院では、それぞれのメディカルスタッフの専門的知識及び技術の進歩を土台としながら、各職種の連携によって、患者中心の医療が推進できるよう心がけております。チーム医療の実践により、医療の質向上、医療従事者の負担軽減、安全性の向上が期待できます。患者さんの不安や悩みを早期に解決できるよう、チームで取り組んでいきたいと考えております。

チーム医療の実践

TEAM 01感染対策チーム

TEAM MEMBER
  • 医師
  • 看護師
  • 臨床検査技師
  • 薬剤師

感染対策チーム(ICT: infection control team)の役割は、感染を未然に防ぎ適切な治療のサポートをおこなうことです。
主な活動内容は、①院内ラウンド、②感染管理教育、③サーベイランス、④コンサルテーションです。

業務内容

① 院内ラウンド

患者さんや職員に、どのような感染管理上の問題が存在し、どのような対策が必要であるかを明らかにするために、組織横断的に活動する感染対策チームを作り院内ラウンドを行っています。医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師等で構成される感染対策チームでは、現場を自分達の目で確かめ、各職種の特徴を生かして意見を出し合い迅速な対応ができるチームを目指しています。

② 感染管理教育

感染管理教育では、エビデンスを基に根拠をもって職務を遂行できる医療従事者育成を目指します。特にリンクナースの育成では感染プログラム実践のサポート隊として、大きな成長を成し遂げなければなりません。リンクナース自体が目的を持って感染対策について考えられる人材育成を推進します。

③ サーベイランス

サーベイランスでは、感染症データの把握、感染防止技術、耐性菌患者の管理などの知識普及、実践援助、疫学に基づいた院内感染サーベイランスの実施に向けて取り組んでいます。ひとたび手術部位感染症(Surgical site infection以下SSI)が発生した場合の在院日数の延期などは患者さんやご家族にとって深刻な問題となります。患者さん、病院ともに不利益を出さないためにも、SSI発生率把握し、対策の評価をするためにSSIサーベイランスを実施しています。

④ コンサルテーション

感染管理に関する問題点や治療方法について、感染対策チームが積極的にかかわっていく体制をとっています。

TEAM 02緩和ケアチーム

TEAM MEMBER
  • 医師
  • 認定看護師

緩和ケアチームでは、がんなどの生命を脅かす疾患を抱えた患者さんまたはその家族に対して、がんなどの病気に伴う身体の痛みや症状を和らげ、精神的な不安や辛さに対する支援を行います。

実践内容

緩和ケアは、がんに対する治療と併行して行われ、様々な苦痛が取り除かれることで治療をうける患者さんが「自分らしい生き方」を選択するためのサポートを行います。患者さんが安心して治療やケアを行えるように、身体的、そして精神的な苦痛(痛み、倦怠感、息苦しさ、落ち込み、不安、不眠、在宅医療の問題、医療費の問題など)を解消していきます。多業種間の専門的な医療チームでサポートを行うことで、患者さんへのケアはよりきめ細かくなり、患者さんやご家族が満足していただけるよう努力しています。

TEAM 03褥瘡対策チーム

TEAM MEMBER
  • 医師
  • 病棟看護師
  • 薬剤師
  • 皮膚・排泄ケア認定看護師
  • 管理栄養士
  • 理学療法士
  • 作業療法士

当院の褥瘡対策チームは、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・ 栄養士・薬剤師・日本褥瘡学会認定師・皮膚排泄ケア認定看護師の多職種で構成され、褥瘡の予防・治療に取り組んでいます。

実践内容

患者プロフィール82男性
在宅療養していたが、体力低下に伴いベッド上で過ごすことが多くなり臀部に褥瘡が発生し、治療を目的に入院された患者さんへの実践内容です

入院時に、まずは医師および病棟看護師により褥瘡部の評価、血液検査を用いた栄養状態の評価、身体機能の評価、食事摂取状況の聞き取りを行いました。

これらを総合して下記の内容を提案・検討しました。

  • ⽪膚・排泄ケア認定看護師

    →「創部の処置⽅法やベッドのマットレス選択」についての提案

  • 管理栄養⼠

    「間⾷時間の栄養サポート飲料の摂取」についての提案

  • リハビリスタッフ

    「ベッドから離れてのリハビリ指導・ベッド上での体位変換」について指導

また週1回の褥瘡チームによる回診では、栄養状態や創部の経過を評価し、経過に応じて治療内容を修正していきました。
その後、栄養状態や⾝体機能が回復し、褥瘡があと少しで治るという時点で退院の⽅針となった際には、⾃宅でもリハビリや褥瘡ケアが途切れることなく継続されるよう、家族だけでなく在宅医や訪問看護師にも経過報告と褥瘡治療の継続指導を⾏ったうえで、退院となりました。

TEAM 04栄養サポートチーム(NST)

TEAM MEMBER
  • 医師
  • 看護師
  • 摂食・嚥下障害看護認定看護師
  • 薬剤師
  • 管理栄養士
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 臨床検査技師

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team : NST)は医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリスタッフ、臨床検査技師など多職種で構成されています。入院患者さんの栄養状態の評価を行い、適切な栄養療法を提言することで、栄養状態の改善、治療効果の向上、合併症の予防、在院日数の適正化などを活動目的としております。

実践内容

NSTの活動

NSTの目指すところは、全ての患者さんに一人一人にあった栄養療法を提供することです。
全入院患者さんに対して、入院時に栄養評価を行います。そこで「栄養障害に陥っている患者さん」「栄養障害に陥るおそれのある患者さん」に対しては、週に1回カンファレンスを実施します。多職種からの情報を集約し、より良い栄養療法を提言していきます。

摂食嚥下支援チーム

2021年4⽉にはNSTの中に摂⾷嚥下⽀援チームを⽴ち上げ、「⾷べる⼒」を維持、向上する活動を⾏っております。

  • 嚥下障害のある患者さん・嚥下障害の疑いのある患者さん

    ⽿⿐科医師による嚥下内視鏡検査を実施しています。
    検査には⾔語聴覚⼠、摂⾷・嚥下障害看護認定看護師、病棟看護師等が⽴ち会い、情報を共有し、その後の嚥下訓練に⽣かしています。

  • 嚥下訓練が必要な患者さん

    ⾔語聴覚⼠を中⼼に摂⾷機能療法を実施します。
    嚥下訓練⾷品、嚥下調整⾷は⽇本摂⾷嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整⾷分類2021」のコード別に5段階(嚥下⾷コード0・1・2・3・4)を準備しており、飲み込みのレベルに応じた⾷事を提供しています。
    摂⾷嚥下⽀援チームが関わる患者さんの経過については週に1回カンファレンスを実施しています。
    嚥下訓練の実施状況、栄養管理、今後の⽅向性などを多職種で検討し、適切で効果的な介⼊ができるよう努めています。

内視鏡

2019年に本館4階に新たな内視鏡センターを開設しました。総床面積は移転前の約5倍となり、検査室4部屋、専用トイレ8室、多目的トイレ1室、診察室2室などを備えています。特筆すべきは大腸内視鏡検査前処置室と検査後のリカバリールームに広大なスペースを確保したことです。また電子内視鏡装置と超音波内視鏡装置を各一式追加したことで、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)や経鼻内視鏡が行えるようになりました。新しい内視鏡設備と広いスペースの中で、患者さんにゆったりとリラックスした気分で高度な検査や治療を受けていただくことが可能となっています。

※超⾳波内視鏡下穿刺(せんし)吸引法 ・・・超⾳波内視鏡 を⽤いて腫瘍に対して細い針を刺し、腫瘍細胞を回収する検査

安心・安全・安楽な内視鏡

希望者には問題がない限り積極的に鎮静を行い、下部内視鏡では全例炭酸ガス送気を使用し、適宜経鼻内視鏡を使用すること等で安心で安楽な検査を常に心がけています。また、安全で高度な技術とともに予約の取りやすさ、予約から検査までの待ち期間が短いことも大きな長所となっています。今後も安全・安楽で質の高い内視鏡検査を迅速に受けていただけるようにスタッフ全員一丸となって対応させていただきます。

※下記「内視鏡⽤炭酸ガス送気装置」の項をご参照ください

鎮静剤の使用
上部内視鏡と大腸内視鏡のいずれも、多くの患者さんに適量の鎮静剤(静脈麻酔)を使用し苦痛の軽減を図っています。血圧や血中酸素濃度等をモニタリングして安全面にも可能な限り配慮しています。なお、鎮静薬を使用した場合には、検査当日の車等の運転はできません。また、患者さんの全身状態から判断し、鎮静薬の使用の希望に添えないこともあります。
経鼻内視鏡の導入
従来の上部内視鏡の約半分の太さの内視鏡を鼻から挿入することによって、嘔吐反射の強い患者さんや高齢の患者さんに苦痛の少ない安全な検査が行えるようになりました。また、鼻腔の狭い方でも、経鼻内視鏡を口から挿入することで比較的楽に検査を受けることが可能です。
内視鏡用炭酸ガス送気装置
従来の空気送気による大腸内視鏡検査では、腸管内の空気がうまく抜けず、検査終了後も腹部膨満や不快感が持続することがたびたびあります。大腸内視鏡時に腸管から速やかに吸収される炭酸ガスを使用することによって、腹満感や腹痛の軽減に努めています。
大腸内視鏡前処置
大腸内視鏡検査を受けられる方で、多く聞かれる声が、「検査前の腸管をきれいにする下剤をたくさん服用するのが辛かった」という声です。当院では、検査2日前から食事制限と、下剤を内服していただき、当日下剤を内服していただきます。当日内服していただく下剤は比較的飲みやすい味で、最小限の内服量ですむようにスタッフ一同工夫をしています。
内視鏡治療機器の感染対策
日本消化器内視鏡学会が示した消化器内視鏡洗浄消毒マルチソサエティガイドラインに沿って検査で使用したスコープの洗浄、消毒を行い、医療機器による感染管理を厳格に行っています。内視鏡検査に使用する処置器機は極力使い捨てのディスポーザブル製品を採用し、感染リスクゼロを目指しています

内視鏡センターの施設

前処置室

検査室

リカバリー室

排便機能外来

慢性便秘症や便失禁は、外食や旅行を控えたり自分に自信が持てなくなるなど、生活の質に影響を与える場合があります。誰にも相談できずに一人で悩んでいる人も少なくありません。これら排便機能障害に対する治療はここ数年で大きく進歩しており、症状改善の可能性が広がっています。当院の排便機能外来は、排便の悩みから解放され自分らしい生活を取り戻していただけるよう、排便機能に特化した検査や治療を提供する専門外来です。

進化する排便機能の治療

便秘も便失禁も、出るか出ないかの結果にばかり注目されますが、原因は多岐にわたり、原因によって適した治療が異なります。当院では、大腸内視鏡検査やCTだけでなく、直腸肛門内圧測定検査や直腸感覚検査、排便造影検査など、一般医療機関では受けることのできない特殊検査も実施可能です。まずは投薬も行いますが、原因を詳細に評価したうえで最適な治療を提案することで、薬を減量・中止することを目指していきます。

薬に頼らない便秘治療
患者さんそれぞれの便秘の原因を明らかにして、適した便秘薬を調整することも行いますが、当院では食事・生活・運動習慣の見直し、いきみ方や排便姿勢の指導などにより、できるだけ薬を減らすことを目指します。
薬とリハビリを
組み合わせた便失禁治療
便失禁も原因は様々であり、便性状が緩い人には食事指導や内服薬の調整、肛門の締まりが弱い人には骨盤底筋体操の指導、便意の感覚が低下している人には内服薬の調整が必要で、これらを組み合わせて治療します。
肛門の機能を取り戻す
仙骨神経刺激療法
小型の機械を殿部に埋め込んで、排便に関与する神経を微弱電流で継続的に刺激することで、肛門周囲の神経や筋肉を活性化し、便失禁の改善を図る治療法です。MRI対応の機種も登場し、適応の幅が広がっています。

インタビュー

矢野雷太

  • 日本外科学会専門医
  • 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会ストーマ認定士
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医
写真

便失禁の改善の可能性について

便失禁や直腸術後の排便障害も、適切に治療すれば改善の可能性は十分にあります。便秘が原因で残便を失禁している場合もあり、便秘治療をすることで便失禁が改善することもあります。原因に応じた薬、食事、生活、リハビリの指導だけでなく、腹腔鏡手術や仙骨神経刺激療法など手術療法を提案することもあります。便失禁が改善したら何をしたいのか、その目標を達成するために最適な治療法を、患者さんと一緒に選択していきます。

排便機能を評価する特殊検査について

直腸肛門内圧測定検査では、安静時に無意識に肛門を締めている圧力や、意識して締めたときに上乗せされる圧力などを測定することで、肛門を適切に締めたり緩めたりできているか調べる事ができます。排便造影検査では、便の代わりに直腸に注入したバリウムを排出する様子を、レントゲン画像の動画で撮影します。直腸や肛門の動きを評価し、適切に息めているか、残便なく排出できているかを調べることができます。

便失禁に対する臨床試験実施中について

便失禁の患者さんを対象に臨床試験を実施しています。肛門を締める力を回復する骨盤底筋訓練は、手応えを感じにくいため継続されにくいという課題があります。筋収縮を目で見える形に変換して確認しやすくする圧力センサーと、振動刺激を加えながら訓練をすることで筋収縮力を上げる効果が期待される振動端子とが埋め込まれたクッションを使用し、自宅で訓練をしていただくことで、肛門を締める力の増強効果を確認する試験です。